円偏波は、横方向の直交する二つの電界成分が等振幅で、位相差が±90°になると形成されます。軸モードのヘリカルアンテナでは、巻線に沿う分布電流の放射がこの条件に近い場を作ります。必ず二本の直交した独立アームを備えるという意味ではありません。
ヘリックスと平面スパイラル
「螺旋アンテナ」は立体的なヘリックスと平面スパイラルを指すことがあります。両者では形状と給電が異なります。ここでは軸方向へ主に放射するヘリックスを扱います。
小型のノーマルモード・ヘリックスが、同じ軸ビームと円偏波を持つとは限りません。巻いた線であることだけでは放射特性を判定できません。
軸方向に放射が重なる仕組み
巻線上を進む電流には位置に応じた位相があり、観測点までの伝搬位相も加わります。適切な形状では各部分からの寄与が軸付近で重なり、直交成分が近い振幅と直交位相を持ちます。
古典的な軸モード設計では一周の長さが自由空間波長程度という目安があります。ただし径、ピッチ、巻数、導体、給電と反射板の全体で結果が変わります。
1.5 GHzでは自由空間波長は約200 mmです。一周をλと仮定すれば直径は約64 mmになります。これは初期寸法の尺度で、完成設計や帯域保証ではありません。
任意の三~五巻が1~10 GHz全域で同じ円偏波を作るわけではありません。巻線に沿う位相を単純に「90°×整数」と置くだけでも設計は決まりません。
軸比を正しく読む
電界楕円の長軸と短軸の振幅をEmax、Eminとすると、AR = Emax/Emin、ARdB = 20 log10ARです。理想円偏波は0 dBです。
3 dBは仕様上の閾値として使われることがあり、この場合の軸振幅比は約1.413です。3 dB自体が理想円偏波という意味ではありません。周波数と観測角をそろえて比較します。
軸上で良好でも、ビーム全体で同じ軸比とは限りません。等振幅からのずれと90°からの位相誤差は、どちらも楕円化の原因になります。
右旋と左旋
巻き方向は軸モードの偏波と関連しますが、RHCP/LHCPの表示には観測方向の規約をそろえる必要があります。逆側から見ると回転の見え方が変わります。
本体を軸まわりに90°回しただけで右旋が左旋になるわけではありません。必要な構造または励振を変更し、場で確認します。
測定方法と限界
入力端のVNA測定だけでは軸比を得られません。直交する複素電界成分、または適切に校正された基準アンテナを使って偏波を評価します。
回転する直線偏波プローブの最大・最小受信レベルは適切な条件で軸比の評価に使えますが、その二値だけでは旋回方向を決められません。反射、位置、プローブの偏波純度も確認します。
ホーンを一律57°傾ける「ブリュースター角試験」が、あらゆるヘリックスの円偏波を証明するわけではありません。
支持材、温度と製造
支持材の誘電率、損失と熱膨張は電気長や形状に影響します。3Dプリントしたプラスチックの螺旋が、導電構造なしに金属放射体と同じになることはありません。
公差と温度試験はモデルから決めます。すべての機種に同じ線径、窒化ケイ素厚やInvar支持を必須とする根拠はありません。材質変更後は整合だけでなく軸比とパターンを再確認します。
衛星用途で確認する項目
要求帯域、旋回方向、角度範囲、利得と環境条件を整理します。衛星の円偏波アンテナはヘリックスだけではなく、パッチや他の構造も利用できます。
参考:軸モード・ヘリックスと偏波の定義。円偏波の品質は実測条件と設計から判断し、裏付けのない衛星事故や共通公差へ結び付けません。