方向性結合器の結合孔数に共通の正解はありません。単孔、多孔、孔を使わない結合線路などの構造があります。四つのRFポートと四つの結合孔も別の意味です。最初に外部接続口、内部の結合開口と締結用の穴を区別します。
孔とポートを数え分ける
ポートは電磁波の入出力を定義する接続境界です。結合孔は隣り合う導波管などを電磁的につなぐ内部開口です。一本の結合経路に複数孔を使っても、その数だけ外部ポートが増えるわけではありません。
一般的な方向性結合器は入力、通過、結合、隔離の四ポートで表します。隔離ポートが内部終端されていれば外部には三つしか見えない場合があります。固定ねじ穴はこの数に含めません。
単孔でも方向性を作れる
Bethe-hole結合器は単一の小開口を利用する構造です。孔の位置、方向と電気的・磁気的結合の関係によって方向の選択性を作ります。
したがって、一孔なら必ず無方向性という判断も正しくありません。多孔方式と同じ帯域や応答になるわけではなく、個別の形状と条件を評価します。
二孔構造の位相関係
同じ伝搬定数を持つ二本の導波管が広壁を共有する単純モデルでは、孔の間隔dにより二つの結合波の位相関係が変わります。
一方の方向では各孔からの寄与を加算し、反対方向では伝搬による差が約2βdとなる構成を考えられます。d ≈ λg/4なら2βd ≈ πとなり、振幅が揃うと打ち消し合います。ここでβ = 2π/λgです。
これは同じモードと対称な条件での説明です。実際の孔の結合位相、壁厚や不連続は設計に含めます。任意の二孔を空けるだけで完全な隔離は得られません。
孔間隔に使う波長
空気充填WR-90のTE10を10 GHzで使う例では、導波波長は約39.7 mmなので四分の一は約9.93 mmです。自由空間の四分の一波長約7.49 mmとは異なります。
この値は原理の検算であり、任意製品の加工寸法ではありません。周波数が変わればβも変わり、中心周波数で得た打消しが帯域全体でそのまま維持されるとは限りません。
多孔化する理由
複数の寄与の振幅と位相を設計し、結合度と方向性の周波数特性を整えることが目的です。孔径、形、位置と間隔を合わせて決定します。
円孔だけでなくスロットや交差形状も使えます。孔を追加すれば必ず低損失または高電力になるという規則はありません。公差、全長、局所電界と加工も制約になります。
マイクロストリップには孔が必要か
平行する結合線路は分布した電界・磁界の相互作用を使います。導波管の共通壁に加工した孔と同じ構造ではなく、通常の結合線路に一~三個の結合孔が必須とは言えません。
基板上のビアが見えても、接地や層間接続のためかもしれません。外観から孔数を数える前に回路図と断面を確認します。
数より先に決める仕様
- 構造、帯域とモード。
- 結合度と帯域内の平坦度。
- 方向性、隔離と反射。
- 通過損失、平均・ピーク電力。
- 終端、寸法と製造公差。
例えば20 dBの結合は定義した入力に対する1%の電力です。その一つの値から孔径や孔数は逆算できません。VNAで各ポートを適切に終端して周波数応答を測り、図面の寸法検査と対応付けます。
単孔・多孔・結合線路の説明と導波管の伝搬式を用い、孔数を性能保証の代わりにしないでください。