矩形導波管と円形導波管では、断面形状だけでなく、基本モード、遮断周波数、偏波の扱い、単一モードで使える範囲が異なります。通常の矩形導波管の基本モードはTE10、円形導波管ではTE11です。円形なら常に低損失・高耐電力、矩形なら必ず安価という比較はできません。
1.形状と基本モード
矩形断面は内幅aと内高さbで定義され、a > bの場合はTE10が最も低い遮断周波数を持ちます。円形断面は内半径rまたは内径D = 2rで定義します。円形TE11には直交する2つの偏波状態があり、理想的な円形断面では同じ遮断周波数になります。
「矩形」は正方形とは限りません。正方形導波管ならTE10とTE01が縮退しますが、aとbが異なる標準矩形では遮断周波数も異なります。WR-90を使うだけで同じ帯域に2つの直交偏波が自動的に得られるわけではありません。
2.遮断周波数の式が違う
空気を満たした理想的な構造では、基本モードの遮断は次のように計算できます。
- 矩形TE10:fc = c/(2a)
- 円形TE11:fc ≈ 1.841c/(2πr) = 1.841c/(πD)
寸法はメートル、cは約299,792,458 m/sです。円形の係数1.841は、境界条件で現れるベッセル関数の導関数の根に由来します。直径と半径の取り違えは、結果を2倍違わせるため注意が必要です。
| 寸法 | 基本モードの遮断 |
|---|---|
| 矩形、内幅a = 30 mm(b < a) | TE10:約5.00 GHz |
| 円形、内径D = 30 mm | TE11:約5.86 GHz |
内径30 mmの円形管を約3.68 GHzとする計算は、この基本式と一致しません。また、遮断を超えれば直ちに十分な性能が保証されるわけではなく、実用帯域には余裕が必要です。
3.高次モードと偏波の扱い
円形管でTE11の次に遮断が低いのは通常TM01で、その係数は約2.405です。単純な空の円形管における「TE11だけが伝搬可能」という周波数範囲の上端と下端の比は約2.405/1.841 ≈ 1.306です。
実際の部品では対称性や励振方法で不要モードの結合を抑え、別の帯域条件を設定する場合があります。そのため、数学的な遮断条件と製品の保証帯域を区別してください。
円形管に円偏波を作るには、直交する成分に適切な振幅と約90°の位相差を与えます。「断面が丸いから自動的に円偏波になる」のではありません。給電、偏波器、OMT、曲がりや加工誤差が偏波純度に影響します。
4.損失・耐電力は形だけでは決まらない
導体損失は、使用モード、周波数、寸法、導電率、表面状態に依存します。円形TE01は特定の低損失伝送で利用されますが、基本TE11と同じ特性ではなく、励振やモード変換にも配慮が必要です。
同様に、耐電力は最大電界、放電条件、発熱、圧力、パルスと冷却条件で変わります。根拠なく「円形は30%高耐電力」「矩形は15%損失が多い」と固定比率を付けることはできません。
5.接続と機械構成
矩形導波管は方向が明確で、標準部品の曲がりやねじりを組み合わせやすい利点があります。円形構造は回転対称の給電部などに利用されますが、円形管をつなぐだけで回転ジョイントが完成するわけではありません。回転時のRF経路、モード、シール、機械支持を含む設計が必要です。
選定時は、帯域、必要偏波、使用モード、許容損失、電力、フランジ、設置空間を明示してください。必要ならモード変換器を含めてシミュレーションと実測を行います。
参考資料
everything RFの円形導波管計算では半径を基にした遮断計算を確認できます。矩形の計算はMicrowaves101、製品構成はDolph Microwaveの導波管部品を参照してください(英語)。