導波管はRF損失が熱になるため温度が上がることがあります。ただし入力電力と損失だけでは温度上昇は決まりません。放熱経路、周囲温度、運転時間と局所的な接続状態を含めて評価します。100 Wという一律の過熱境界はありません。
どこで熱が発生するか
金属壁面の有限な導電率による導体損失が主な要因の一つです。空気充填の直管では通常、固体誘電体の体積損失はありませんが、窓、支持材や誘電体充填部を含む場合はその損失も評価します。
フランジの接触不良、汚れ、変形と高い電流密度は局所的な発熱に関係します。経路全体の平均損失が小さくても、一箇所に熱が集中する可能性があります。
dBから発熱量を求める条件
反射や外部漏れを無視でき、損失が対象部品内の散逸に対応する近似では、Pheat = Pin[1 − 10−L/10]です。Lは対象区間の損失dB、電力はWで扱います。
仮に入力1 kW、区間損失0.1 dBなら発熱は約22.8 Wです。0.5 dBなら約108.7 Wになります。いずれも計算例であり、特定のWRサイズの発熱保証ではありません。
S21だけから熱を計算すると、反射電力まで熱に数える場合があります。整合した出力で、測定対象が適切な単一モード2ポートなら吸収の比率は1 − |S11|² − |S21|²で評価できます。ただし漏洩放射や未測定モードへ出た電力があると、この差のすべてが金属内の熱とは限りません。
WR-90の損失値をどう読むか
Microwaves101は理想的な銅WR-90の10 GHzで約0.108 dB/mという計算例を掲載しています。実物は表面、材質と接続などにより異なります。0.5 dB/mをあらゆる銅WR-90の標準値とすることはできません。
損失がdB/mなら長さを考慮します。短いフランジや変換器の損失を直管の単位長さ損失へ混ぜると、改善箇所を誤る場合があります。
導電率と熱伝導率は別の量
導電率σの単位はS/mで、電流の流れやすさに関係します。良導体の表面抵抗は概ねRs ≈ √(πfμ/σ)です。周波数、透磁率と表面状態も重要です。
熱伝導率kの単位はW/(m·K)で、熱の移動に関係します。材質比較では両方を見ますが、同じ係数ではありません。接触熱抵抗や壁厚、支持体も実際の放熱を左右します。
温度上昇は熱モデルで見積もる
単純な定常集中モデルではΔT ≈ PheatRθです。仮に22.8 W、環境までの等価熱抵抗が0.5 K/Wなら約11.4 Kの上昇です。Rθは形状、取り付け、対流と放射に依存する仮定です。
起動直後は熱容量と時間応答も必要です。外壁の一温度だけでは内部窓や接触部の最高温度が分からない場合があります。「1 mごとに10~20℃上がる」という固定則は成立しません。
平均電力とピーク電力
矩形パルスなら平均電力はピーク電力×パルス幅×繰返し周波数で求められます。ただしピーク電界による放電などは平均発熱とは別に評価します。
反射した負荷では定在波によって局所場が変わります。温度が低いだけでピーク耐電力に余裕があるとは言えず、低電力VNA測定だけでも定格電力の合格は決まりません。
発熱が増えたときの確認
- 周波数、入力、負荷反射と動作率を記録する。
- 以前と同条件の損失・温度データと比較する。
- 停止・必要な減圧など装置の手順後、接続と汚れを確認する。
- 支持、通風と冷却経路の変化を調べる。
- 窓、シールと周辺部品を含む許容温度で判定する。
100℃以下なら全製品が安全、という共通基準はありません。根拠は導波管損失の解説と実機の熱・RF仕様を組み合わせて確認してください。