矩形導波管の波動インピーダンスは、モード、周波数、断面と媒質で変わります。空気充填WR-90のTE10では10 GHzで約499 Ωです。ただしこれは横方向の電界・磁界の関係であり、同軸ポートの50 Ωとそのまま直列接続の抵抗として比較する値ではありません。
波動インピーダンスとポートの基準
単一モードについて横電界と対応する横磁界の比を定義すると波動インピーダンスが得られます。導波管には一意な二端子の電圧・電流がないため、等価伝送線路やSパラメータでは正規化の定義も必要です。
データを見るときは、計算が場の比なのか、測定ポートの基準なのかを確認します。50 Ω同軸とTE10の接続には、モードを励振する変換構造が使われます。
TEの式
理想的な一様媒質の損失なしモデルで、遮断より上ではZTE = ωμ/β = η/√[1 − (fc/f)²]です。η = √(μ/ε)は媒質の固有インピーダンスで、空気なら約377 Ωです。
同じモデルではZTE = ηλg/λと表せます。空気中のλはほぼ自由空間波長です。遮断に近づくと理想値は大きくなります。
TMは逆の周波数依存
ZTM = β/(ωε) = η√[1 − (fc/f)²]です。TMでは遮断の直上で小さくなります。TEの式をすべてのモードへ当てはめないでください。
矩形導波管のTMは両添字が正である必要があります。TM10を選んで計算しても、このモデルの物理的なモードにはなりません。
WR-90で数値を確かめる
内部a = 22.86 mm、b = 10.16 mmで、TE10の遮断はc/(2a) ≈ 6.557 GHzです。bはTE10の式には現れませんが、高次モードや損失などに関係します。
| 周波数 | 波動インピーダンス |
|---|---|
| 8.2 GHz | 約627 Ω。 |
| 10 GHz | 約499 Ω。 |
| 12.4 GHz | 約444 Ω。 |
したがって帯域全体を480~520 Ωの一定範囲とする説明は適切ではありません。さらに高い周波数では上位モードが問題になり、TE10式の値が得られるだけでは部品の使用可否は決まりません。
遮断以下と損失のある実機
遮断以下は通常の進行波ではなくエバネッセント場として扱います。符号の約束に応じて波動インピーダンスはリアクティブな形になります。負の平方根を絶対値へ置き換えて伝搬値を作らないでください。
実機の導体損失や不均一な媒質では、伝搬定数とインピーダンスの扱いも複雑になります。表面、曲がり、窓と接合を含むモデルが必要です。
インピーダンス差と反射
単純な一様伝送線路と実抵抗負荷で、基準Zに対し負荷1.1ZならΓ = (1.1 − 1)/(1.1 + 1) ≈ 0.0476です。反射電力は約0.227%で、10%の差が常に20%以上の反射になるわけではありません。
この式を複雑な導波管段差へ場の重なりや上位モードを無視して適用することもできません。段差や変換器は電磁界解析と適切なSパラメータで評価します。
測定に必要な情報
帯域、モード、校正面、基準の正規化、接続部と終端を記録します。VNAに表示される基準値を、そのまま管内E/Hの直接測定値と解釈しないでください。