理想的な均一媒質の閉じた矩形金属導波管では、TM01、TM10とTM00は非零のTM固有モードになりません。理由は「遮断式が計算不能」ではなく、導体境界を満たすTMの場が、添字をゼロにすると全域で零になるためです。
1.対象と座標
断面を0 < x < a、0 < y < b、伝搬軸をzとし、壁は完全導体、内部は均一媒質とします。TMではHz = 0で、Ezを使って横方向成分も構成します。
これは通常の矩形導波管の固有モードの話です。円形、リッジ、複雑な誘電体装荷や開放構造へ同じ添字規則を無条件に移しません。
2.壁では接線電界が零
側壁に沿うEzは接線成分なので、x = 0、aおよびy = 0、bで零になる必要があります。導体表面の法線電界まで必ず零という条件ではありません。
境界でEzが零であることは、通常のTMモードの内部まで零という意味ではありません。適切な添字なら内部に非零の分布が存在します。
3.正弦積の解を見る
変数分離したTMの縦電界は、伝搬因子を除いてEz(x,y) = E0 sin(mπx/a) sin(nπy/b)と書けます。
m = 0なら最初の因子がどこでもsin 0 = 0、n = 0なら二番目が同様に零です。その結果は伝搬する場を表す非零の固有関数ではありません。したがってTMにはm,n = 1,2,…が必要です。
TM01とTM10を非対称な給電で無理に励振すれば現れる、という問題ではありません。給電は許される別モードや局所場を作ることがあります。
4.遮断式だけに添字を代入しない
空気充填の許されたモードではfc,mn = (c/2)√[(m/a)² + (n/b)²]です。形式的にm = 0、n = 1を代入する算術自体は可能です。しかし、その数値からTM01という非零解の存在は導けません。
先に境界条件と固有関数を確認する必要があります。TM00の形式的な零を、矩形中空導波管がTEMを持つ証拠にすることもできません。
5.TE10が成立する理由
TEではEz = 0で、Hzは典型的にcos(mπx/a)cos(nπy/b)の形になります。一方の添字が零でも他方が非零なら非自明な場を構成できます。TE00は通常の非零伝搬モードにはなりません。
正弦と余弦、境界条件が異なるため、TE10の存在とTM10の不在は矛盾しません。アスペクト比が5:1を超えるとTM10が現れるという一般則もありません。
6.WR-90と円形の具体例
WR-90の内寸22.86 × 10.16 mmでは、TE10遮断は約6.56 GHz、最初のTMであるTM11は約16.15 GHzです。10 GHzではTE10を利用できてもTM11は通常の伝搬モードになりません。
円形導波管では座標と固有関数が異なり、Bessel関数で表すTM01は存在します。円形の「01」と矩形の「01」は同じ断面内の分布ではありません。
シミュレーションと測定の読み方
ポートモードの場分布、境界、媒質と正規化を確認します。ソフトが表示するモード番号は必ずしも理論上の添字ではありません。分類名だけで同一視せず、縦成分と横分布を見ます。
存在しないモードを指定したから測定器で常にS11 > 0.99になる、という共通結果はありません。実際の入力は別モード、反射と局所場へ分配されます。全反射率を場の存在証明の代わりにしません。
導波管の遮断と伝搬式および矩形断面寸法を参照し、上記の境界条件から式の適用範囲を確認してください。