矩形導波管がハイパスに似た性質を持つのはモードごとに遮断周波数があるためです。遮断より上ではそのモードが伝搬でき、下では一様区間の場はエバネッセントになります。ただし有限の導波管が理想的な無限帯域フィルタになるわけではありません。
構造と仮定
幅a、高さb、a > bの空気充填矩形管を考えます。完全導体に近い壁と均一な断面で、通常の最低遮断モードはTE10です。単導体の中空断面では同軸線のTEMをそのまま使えません。
壁の境界条件が横方向の場の形を決め、軸方向の伝搬定数に制約を与えます。金属が低周波だけを吸収する仕組みとは異なります。
TE10の遮断
空気中の近似でfc = c/(2a)、遮断波長λc = 2aです。WR-90のa = 22.86 mmではfc ≈ 6.56 GHzです。
8.2–12.4 GHzという一般的な使用帯域は6.56 GHzの遮断値と別です。寸法を変えると遮断も変わり、同じ帯域名だけで任意の断面を交換できません。
遮断以上の伝搬
損失を無視したTE10の軸方向定数はβ = (2πf/c)√[1−(fc/f)²]です。f > fcではβが実数となり、軸に沿う位相進行が得られます。
管内波長λg = 2π/βは自由空間波長より長く、遮断に近づくと大きくなります。WR-90の10 GHzでは約39.7 mmで、自由空間の約30 mmとは異なります。
理想空気充填モデルの位相速度はcより大きくなり得ますが、これを情報が光速を超える証拠と解釈しません。群速度はc√[1−(fc/f)²]で、このモデルではcより小さくなります。
遮断以下の減衰
一様区間の減衰定数はα = (2π/c)√(fc²−f²)となり、減衰する成分の振幅はe−αzに比例します。有限区間には両端からの場もあり、励振と境界を含む解が必要です。
WR-90の5 GHzではα ≈ 88.9 m−1です。減衰成分の振幅が1/eになる距離は約11.25 mmで、10 mm区間の指数因子は約7.72 dBに相当します。
この値は接続された有限部品の実測S21をそのまま保証しません。遷移部、反射と共振が影響します。また伝わらない電力が全部熱になるわけではなく、入力へ反射する成分もあります。
高周波側にも制限がある
周波数を上げ続けると高次モードが許されます。WR-90のTE20遮断は約13.11 GHz、TE01は約14.75 GHzです。接続や対称性により励振される量は異なります。
導体損失、表面、窓とアダプターも通過帯域を制限します。遮断を超えた全周波数が同じ低損失・単一モードになるとは言えません。
実際のフィルタとして使う場合
指定阻止帯、必要減衰、通過損失、反射と電力を定義します。断面と長さに加え、励振・終端を含む全体で設計し、対象モードの測定基準面を決めます。
アイリスや共振器を加えた帯域通過・低域通過構造は、直管の基本遮断だけとは別の周波数選択を使います。低いS21だけでは必要なフィルタ応答を全部検証できません。