導波管は、電磁界を一定の構造内に保ちながら電波を伝える伝送路です。マイクロ波機器で使う中空金属導波管を理解するには、境界条件、伝搬モード、遮断周波数、管内波長、損失と接続の5点を押さえると整理できます。ここでは空気で満たした矩形導波管を中心に説明します。光ファイバーや誘電体導波路には、別のモード条件があります。
1.金属の壁が電磁界の形を決める
矩形導波管は、内幅aと内高さbを持つ中空の金属管です。通常はa > bとします。理想導体の表面では接線方向の電界がゼロになるため、内部で成立する電磁界分布は任意ではありません。この境界条件に合った分布が、導波管に沿って伝わります。
「電波が壁で反射しながら進む」という説明は直感的な理解には役立ちます。ただし、実際の設計は電磁界分布と伝搬定数に基づきます。単に管を金属で囲めば、どの周波数でも低損失になるわけではありません。
2.TEとTMは電界・磁界の縦成分で区別する
進行方向をzとしたとき、TEモードはEz = 0、TMモードはHz = 0です。TEでも縦方向の磁界は存在し、TMでも縦方向の電界は存在します。TEとTMは周波数帯の名称ではありません。
矩形導波管のTEmnではm、nは0以上の整数ですが、両方を0にはできません。TMmnでは両方が1以上です。標準的なa > bの矩形導波管ではTE10が最低の遮断周波数を持ち、基本モードになります。
一様な媒質で満たされた単一導体の中空導波管はTEMモードを支持しません。同軸ケーブルは内導体と外導体を持つため、通常の使用範囲ではTEMモードで伝送できます。
3.遮断周波数と推奨使用帯域は異なる
空気充填の理想矩形導波管における遮断周波数は、次式で表せます。
fc,mn = (c/2)√[(m/a)² + (n/b)²]
基本モードTE10ではfc,10 = c/(2a)です。寸法はメートル、cはm/sで代入すると、結果はHzになります。
| 項目 | 値・意味 |
|---|---|
| 内寸 | a = 22.86 mm、b = 10.16 mm |
| TE10遮断周波数 | 約6.56 GHz |
| 一般的な推奨使用帯域 | 8.2~12.4 GHz |
| TE20遮断周波数 | 約13.11 GHz |
遮断周波数以下では、そのモードは通常の進行波として伝搬せず、エバネッセントな場になります。8.2 GHzはWR-90の遮断周波数そのものではありません。実用帯域は、遮断近傍の損失・分散と高次モードの影響を避けるために余裕を設けています。接続する部品が同じ帯域を保証していることも必要です。
4.管内波長は自由空間波長より長い
空気充填の理想導波管でf > fcの場合、管内波長はλg = λ0/√[1 − (fc/f)²]です。WR-90を10 GHzで使う例では、自由空間波長は約30.0 mm、TE10の管内波長は約39.7 mmです。
この違いは、導波管内の整合構造や位相長を設計するときに重要です。位相速度が光速を超える計算結果になっても、情報が光速を超えるという意味ではありません。理想的な無損失モデルでは群速度は光速より小さく、遮断に近づくほど分散が大きくなります。
5.損失と接続条件を仕様で確認する
実際の金属には有限の導電率があり、導体損失が発生します。材料、表面状態、周波数、長さに加えて、曲がり、ねじれ、フランジのずれや隙間も反射や損失につながります。「導波管なら常に0.1 dB/m」「どの同軸よりも低損失」といった一律の比較はできません。
- 挿入損失:周波数範囲、長さ、曲がりや変換器を含むかを確認します。
- 反射:リターンロスまたはVSWRを、接続条件とともに確認します。
- 電力:CWとピーク電力、パルス幅、温度、圧力、冷却条件を区別します。
- 機械接続:WRサイズだけでなく、フランジ規格、位置決め、シールの互換性を確認します。
選定前にそろえる情報
使用周波数、必要な伝送モード、許容損失、電力条件、全長、曲がり、両端インターフェースを先に整理してください。WR番号は寸法系列を示しますが、システム全体の帯域・耐電力・気密性を保証するものではありません。
式とWR-90の帯域はMicrowaves101の導波管数学解説で確認できます。部品選定にはDolph Microwaveの標準導波管部品をご覧ください。両リンクは英語です。