同軸ケーブルの不具合には、曲げ・圧迫による変形、端末の接触不良、浸水・腐食、被覆の劣化などがあります。全用途に共通する「故障の50%以上が浸水」という順位は、根拠となる調査なしには決められません。症状と使用環境を確認し、区間ごとに切り分けます。
同軸は形状も電気特性の一部
同軸は中心導体、誘電体、外部導体の位置関係で特性インピーダンスが決まります。均一な理想構造の近似ではZ0 ≈ (60/√εr) ln(b/a) Ωで、aは中心導体半径、bは外部導体の内半径です。
中心導体の方が外部導体の内側空間より大きい寸法は成立しません。潰れや折れはこの幾何関係を変え、反射や損失を生じさせます。ただし変形だけから「局所的に必ず90 Ωになる」といった数値は決められません。
曲げ半径と繰り返し屈曲
最小曲げ半径はケーブル品番のデータシートで確認します。固定配線の1回の曲げと、可動部で繰り返す曲げでは許容条件が異なる場合があります。RG-6という名称だけからすべての製品へ同じ50 mmを適用しないでください。
ケーブルをドアに挟む、結束バンドで強く潰す、コネクター直後で急角度に曲げることは避けます。一度潰れた誘電体は外形を戻しても元の電気特性に戻るとは限りません。
コネクターと端末処理
中心導体の長さ、剥き寸法、編組の処理、圧着・締結はコネクターの指定に従います。編組の接触や中心導体の折損、緩みは、短絡や断続的な接触不良の原因になります。
機械的に接続できても、インピーダンス、周波数、中心接点の寸法が適合するとは限りません。適切なトルク値もコネクター別です。締め過ぎは解決策ではありません。
浸水、腐食、屋外劣化
水は接続部や傷んだ被覆から侵入し、導体・シールドを腐食させたり誘電特性を変えたりします。濡れた内部を外からテープで覆うだけでは、既に生じた損傷は直りません。
ケーブルとコネクターの屋外仕様、シール、引込方向、応力緩和を確認します。IP表示は指定された組立条件で評価されるため、単一部品のIP等級だけで接続系全体を保証できません。紫外線、温度、薬品への適合も別に確認します。
不具合を切り分ける手順
- 機器を停止し、同軸経由のDC給電を含めて安全に切り離す。
- 症状、周波数、雨や曲げとの関係を記録する。
- 外観と端末を点検し、既知の正常な短いケーブルで区間を置き換えて比較する。
- 必要なら導通と短絡を確認する。ただしDC導通だけで高周波性能を合格としない。
- 校正したVNAで挿入損失・反射を測り、長い区間では対応するTDR等で不連続位置を調べる。
アンテナや保護部品には正常でもDC短絡を示す構造があります。接続機器を切り離し、回路仕様と測定対象を理解した上で判定してください。通電した機器へ不適切な測定器を接続しないでください。
修理できる部分と交換すべき部分
損傷が端末だけに限られ、健全なケーブルを十分残せるなら、適合部品で端末を再施工できる場合があります。誘電体の潰れ、広範な浸水、シールド腐食、被覆割れがあれば、その区間の交換を検討します。
途中の継ぎ足しは接続損失と反射、浸水箇所を増やす可能性があります。修理後は対象帯域で確認し、写真と測定結果を保存します。寿命も屋内外、材質、熱、屈曲条件で変わるため一律の年数では決めません。
同軸の構造とインピーダンスの基礎はMicrowaves101の同軸解説を参照してください。実際の曲げ半径、損失、締付けは、使用するケーブルとコネクターのメーカー仕様を優先します。