ミリ波アンテナの設計では、開口、損失、材料、公差、走査、熱と測定を合わせて検討します。厳密なミリ波の範囲は30~300 GHzですが、業界では28 GHz付近もmmWaveと呼ぶことがあります。まず実際に使う数値範囲を明確にします。
1.開口とカバレッジの両立
波長が短いと同じ面積に多くの素子を配置できますが、全開口を小さくしても同じ高利得を必ず維持できるわけではありません。概算にはG ≈ 4πηA/λ²を使い、面積と開口効率を区別します。
28 GHzの自由空間波長は約10.7 mmです。パッチの寸法には基板、有効誘電率とフリンジング電界が関係します。物理的な端で電界が完全に止まるわけではないため、単純な半波長寸法から調整が必要です。
パッチを5 mmから3 mmへ縮めれば利得が必ず8 dBiから4 dBiへ変わる、という共通則はありません。整合帯域、放射効率と方向を同じ条件で比較します。
2.自由空間と大気の損失を分ける
自由空間損失は約92.45 + 20 log10(f/GHz) + 20 log10(r/km) dBです。28 GHz、100 mなら約101.4 dBになります。
これは距離に対して対数で変わるため、一定のdB/kmとして扱いません。気体や降雨の減衰は別の項です。28 GHzと60 GHzに同じ60~100 dB/kmを一律に設定しないでください。
3.基板と接合の損失
相対誘電率εrと損失正接は異なる特性です。周波数、方向、温度、製造ばらつきを含むデータを使います。銅箔粗さ、表面処理、接着層とレドームも評価します。
SIWは基板内に導波構造を作る方法ですが、すべての表面波や誘電損失を取り除きません。厚いパッチ基板が帯域に有利な場合でも、表面波や給電とパターンの影響を同時に調べます。
材料名だけで固定の効率や低熱膨張を保証せず、実装に対応した方向と条件の特性を確認します。
4.電気的感度から公差を決める
すべてのPCBに±5 μmやレーザー加工が必要なわけではありません。線幅、隙間、ビア、位置と層厚を変え、性能に敏感な寸法を特定して工程能力と照合します。
自由空間の60 GHzでは波長が約5 mmで、経路差0.1 mmは約7.2°です。基板線路では実際の伝搬定数を使います。この例は全寸法へ同じ公差を指定する理由にはなりません。
5.走査角とビームスクイント
素子パターン、間隔と相互結合を含めて全帯域の走査特性を確認します。グレーティングローブ回避のために素子間隔を「少なくともλ/2」にする、という説明は逆です。大きすぎる間隔が問題を起こし得ます。
単純な一次元等間隔アレイの走査範囲では、境界d = λ/(1+|sin θmax|)を目安にできます。±60°なら約0.536λで、境界そのものを避け、最短波長や実際の配置を検証します。
固定位相差では周波数とともにビーム方向が変わる場合があります。真時間遅延TTDは対策の一つですが、遅延範囲、分解能と損失を伴います。振幅テーパーによる副ローブ抑圧も主ビーム幅との交換条件があります。
6.熱とパッケージ
送受信回路の損失は熱になり、温度分布、膨張と位相に影響します。低い誘電損失と、全方向の低い熱膨張係数は同じ意味ではありません。
レンズや3Dプリント構造を追加しても、すべてのチャンネル誤差が自動で消えるわけではありません。材料と製造誤差、取付けを含め、構造で改善する項目と校正する項目を分けます。
7.完成状態で検証する
VNAは定義したポートの整合と伝送を確認します。利得、パターンと偏波には放射測定が必要です。近傍界測定ではプローブ補正と変換、遠方界測定では距離と反射環境を確認します。
帯域中央だけでなく端、主要走査角と必要な温度を含めます。測定面、ケーブル、レドームとソフトウェアの版を記録し、未測定条件への推定を区別します。
気体と降雨はITU-R P.676とP.838、走査はグレーティングローブの原理が参考になります。改善率は対象設計の解析と測定で確認します。