アンテナ利得は、等方性アンテナを基準に、ある方向へどれだけ効率よく電波を送受信できるかを表す量です。円形開口のパラボラアンテナでは、G = η(πD/λ)²で利得の目安を計算し、GdBi = 10 log10(G)でdBiに換算します。必要なのは開口径D、波長λ、開口効率ηです。
利得と増幅器の違い
受動アンテナは電力を作り出す装置ではありません。特定の方向に放射を集中させることで、その方向の利得が高くなります。受信時には、有効開口面積が大きいほど同じ入射電力密度から多くの電力を取り出せます。
指向性は放射の集中度を示し、利得にはアンテナの効率も含まれます。LNBやブースターの増幅率は別の値です。たとえばLNBの増幅率をパラボラの利得として扱っても、必要な反射鏡の大きさは求められません。
パラボラアンテナの利得を計算する4つの手順
目次
1.周波数から波長を求める
自由空間波長はλ = c/fです。c ≈ 299,792,458 m/sとすると、12 GHzの波長は約0.02498 m、すなわち約25 mmです。計算に使うのはアンテナが受信する無線周波数であり、コンバーター出力の中間周波数ではありません。
2.有効な開口寸法を確認する
円形開口の面積はA = πD²/4です。Dとλの単位はメートルにそろえます。オフセット形では、反射鏡の外観上の縦横寸法をそのまま円の直径とみなせない場合があります。メーカーが示す開口寸法または等価開口径を確認してください。
3.開口効率の根拠を決める
ηは有効開口面積と幾何学的開口面積の比です。給電の分布、スピルオーバー、遮蔽、表面精度、損失などが影響します。例題でη = 0.60を置くことはできますが、すべての製品に共通する保証値ではありません。実機の設計には仕様書や測定値を使用します。
4.線形利得をdBiへ換算する
開口径0.60 m、周波数12 GHz、開口効率0.60という仮定で計算します。
- λ ≈ 0.02498 m
- πD/λ ≈ 75.45
- G ≈ 0.60 × 75.45² ≈ 3,416
- GdBi ≈ 10 log10(3,416) ≈ 35.3 dBi
この35.3 dBiは仮定に基づく計算例で、特定製品の実測値ではありません。
直径を変えた場合の計算例
| 開口径 | 計算上の利得 |
|---|---|
| 0.60 m | 35.3 dBi |
| 0.90 m | 38.9 dBi |
| 1.20 m | 41.4 dBi |
周波数と効率が同じなら、直径を2倍にすると面積は4倍になり、利得は約6 dB増えます。一方、ビーム幅は一般に狭くなり、向きの調整や支持構造に求められる精度も変わります。「大きいほど設置条件に関係なく受信が改善する」とは限りません。
計算値と実際の受信が違う理由
- 方向のずれ:計算は通常、主ビームの最大利得を対象にします。衛星がその方向から外れると利用できる利得は低下します。
- 偏波の不一致:アンテナと信号の偏波が合わないと、リンク上の損失になります。
- 反射鏡と給電部:変形、遮蔽、給電位置のずれなどは開口効率を変化させます。
- 受信系の損失と雑音:ケーブル、接続部、コンバーターの性能も受信結果に影響します。これらをすべてアンテナ単体の利得に含めてはいけません。
dBi、dBd、受信レベルを区別する
dBiは等方性アンテナ基準、dBdは半波長ダイポール基準です。同じ基準条件なら0 dBdは約2.15 dBiに相当します。テレビやチューナーの「アンテナレベル」は機器独自の指標であることが多く、その数値をdBiへ直接換算することはできません。
また、G = η(πD/λ)²は円形開口を持つ反射鏡アンテナの近似式です。ホイップ、八木、パッチなどに直径を当てはめる式ではありません。別形式のアンテナは対応する解析、シミュレーションまたは校正された測定で評価します。
仕様確認と参考資料
仕様書では、周波数、偏波、測定条件、代表値か保証値かを確認してください。整合損失を含む実現利得と、含めない利得の違いにも注意が必要です。
開口効率と利得の関係はAntenna-Theoryのパラボラ利得解説を参照できます。用途別の構成についてはDolph MicrowaveのSATCOMアンテナ一覧をご覧ください。いずれも英語の資料です。